「○○でいい」が持つ「妥協」というニュアンスについて
はじめに
Twitterで「そうめんでいいよ」の「で」を「が」に矯正しているというようなツイートを見た.どうも「○○でいい」という表現は「妥協」のニュアンスが含まれているように感じる人が多いようだ.そこで,「○○でいい」がなぜ「妥協」のニュアンスを持つのか考えてみた.因みに筆者は言葉のプロじゃないし,書いてる内容も科学的根拠や統計的に示された事実に基づいたものじゃないので話半分に聞いてほしい.
十分条件の発信
まず,次の発言を考える.
Aさん「年収3000万円以上の人となら結婚する」
この発言を論理的にとらえると年収3000万円以上が結婚する十分条件であることが分かる.しかし「年収3000万円以上」は「年収1000万円以上」の部分集合に当たるため,Aさんの結婚相手の十分条件が年収1000万円以上という場合も考えられる.つまり,年収1000万円でも結婚相手として認められる可能性は十分にある.
しかし我々人間は,Aさんは年収が1000万円の相手とは結婚しないのだろうと想像できる.何故なら年収1000万円以上が結婚相手の十分条件だとしたら,「年収1000万円以上の人となら結婚する」と発言するはずであり.わざわざ3000万円というのは1000万円じゃ不十分であるためと考えるからだ.
以上の例から人間は十分条件を述べる際,より厳密なものを言う傾向があると考えることができる.
助詞「で」について
で[格助・接助]
[格助]《格助詞「にて」の音変化》名詞、名詞的な語に付く。
1 動作・作用の行われる場所・場面を表す。「家で 勉強する」「委員会で 可決する」「試験で 合格点を取る」
「やまきの館(たち)―夜討ちに討ち候ひぬ」〈平家・五〉
2 動作・作用の行われる時を表す。「二〇歳で 結婚する」
「十三―元服仕り候ふまでは」〈平家・七〉
3 動作・作用を行う主体となる組織・団体を表す。「政府側で 検討中だ」「気象庁で 光化学スモッグ警報を発令した」
4 期限・限度・基準を表す。「一日で 仕上げる」「五つで 二〇〇円」
「三百騎ばかり―喚(をめ)いて駆く」〈平家・七〉
5 動作・作用の行われる状態を表す。「みんなで 研究する」「笑顔で あいさつする」
「盗人なる心―、否(え)、主、かく口きよくな言ひそ」〈今昔・二八・三一〉
6 動作・作用の手段・方法・材料などを表す。…を使って。「電話で 連絡する」「テレビで 知ったニュース」「紙で 作った飛行機」
「この御馬―宇治河のまっさき渡し候ふべし」〈平家・九〉
7 動作・作用の原因・理由を表す。「受験勉強で 暇がない」「君のおかげで 助かった」
「その御心―こそかかる御目にもあはせ給へ」〈平家・二〉
[接助]《7から。近世語》活用語の終止形に付く。原因・理由を表す。
「おれが居て、あちこちから算段してやる―通られるが」〈滑・浮世床・初〉
「○○でいい」はどうも一の4の「期限・限度・基準を表す。」であると思う.ここで以下の文を考える.
「1時間で○○できるよ」
これは「1時間」が○○するための十分条件である.また,前章の例から人間は十分条件の述べる際により厳密な表現をする傾向にあるため,聞き手は50分で○○するのは難しいと勝手に想像する.これが聞き手が言い手の十分条件を必要条件として聞いてしまう心理を働かせるのではないかと考える.
そうめん
そうめんに適用する.
「そうめんでいいよ」
これは「そうめん」が昼食の十分条件であることを述べているに過ぎないが,聞き手にとっては「そうめん」というレベルが昼食として認められる必要条件であり,認められる昼食のなかの最底辺,つまり「妥協」という印象を抱かせるのではないかと考える.
おわりに
はじめにも書いたけど話半分に聞いてください.
*1:
で(デ)とは - コトバンク(アクセス日:2018-6-29)